2006年07月05日

「ネットワーク中立性」(Network Neutrality)について

ネットワーク中立性に関する記事やブログを、ちょくちょくブックマークしてきたものの、いろんな議論が書いてあって混乱してきたので、少し整理しようと思い、エントリーします。

■ネットワーク中立性とは
そもそもネットワーク中立性とはなんなんでしょうか?WWWの創始者とされるTim Barners-Leeは、次のように定義しています。

Net neutrality is this: If I pay to connect to the Net with a certain quality of service, and you pay to connect with that or greater quality of service, then we can communicate at that level. (ネットワーク中立性とは、もし「私」が一定のクオリティーに対してネット接続料金を支払い、「あなた」もそれと同様のクオリティーに対してネット接続料金を払ったなら、「私」と「あなた」はそのクオリティーレベルで通信が可能である、ということだ)

なので、例えばISPが自分たちが配信するコンテンツに優先的にバンド幅を割り当てることで、他のコンテンツが許容範囲下のバンド幅しか割り当てられないことがあれば、ネットワーク中立性の思想に反するということになります。

消費者自身の判断でコンテンツを選び、そうすることによって競争が促進され、ネット上でのイノベーションが促進される、というのが彼らの基本的な主張でしょう。

これ自体は誰も否定しないでしょうが、別の視点で様々な反論があります。

■ 反論1:パケットに優先順位をつけるのはネットの基本的な技術である
動画など一定のクオリティーが要求されるサービスを優先的にパケット転送するのは、インターネットの基本的な技術であり、ネットワーク中立性を主張する人たちはそれを阻害するというのか!という反論です。

さきほどの Tim のネットワーク中立性の定義に立ち返ってみれば、「パケットに優先順位をつけてはならない」ということを言っているわけではないので、この反論はどこか的がはずれている気がします。

"A"という動画サイトと、"B"という動画サイトがあったときに、"A"よりも"B"を優先すれば、中立性の概念に反する可能性がありますが、「動画配信」に対して他のサービスよりも優先順位をつけるのは問題にならないはずです。

Googleも総務省への提言書に、客観的に合理的な優先順位化であれば問題ないと書いています。

■ 反論2: 新たな規制をつくらなくても、特定のコンテンツを差別することはない
これはさらに2つの要素に分かれている気がします。
@既にそれなりに規制が存在する(アメリカの話)
Aコンテンツを差別したら、そもそもISPとしての価値が下がってしまう

@は私には判断がつきません。既に相応の規制があるのかもしれません。

Aは、もしISPが自社のコンテンツだけ優先配信するようなポリシーを取ったら、ユーザーは別のISPに乗り換えようという誘引が働くはずであり、そもそもISPはそんなことをしない、ということで一面正しいと思います。まさしく"Content is king"ですから。

ただし、これはGoogleの総務省の提言書にあるように、ISP間で「競争が働いていれば」という前提つきだと思います。アメリカはインフラ系の会社がM&Aで寡占化状態になっていますので、消費者にチョイスがないというのが、ネットワーク中立性を主張している人たちの言い分だと思います。(逆に通信業者側は競争が働いている、と言っているわけですが…)。

日本ではADSL市場では、規制緩和とソフトバンクのおかげでかなり競争が働いていますが、光ファイバーの市場ではNTTが圧倒的なシェアを持っている状態です。

■ 反論3:このままだと通信業者はやっていけないのだよ、財政的に…
背景としては、以下のように感じだと思います。

@消費者に要求できる通信価格は定額化&低下している
AGyaoやYoutubeのような動画サイトの増加によりトラフィックが急増している
Bよって、通信設備への投資が必要であるにもかかわらず、消費者価格を上げることもできない
Cだから、コンテンツプロバイダーに課金するなどのビジネスモデルの多様化が必要

通信業者が主張しているのは、ネットワーク中立性を強制すれば、ビジネスモデルに制約をかけることになり、結果的に通信インフラの整備が遅れる、ということです。

私はこの前、ICPF( http://www.icpf.jp/ )のセミナーでGoogle日本法人社長である村上さんの講演を聞きにいったのですが、村上社長は「消費者ごとに水道メーターみたいにトラフィックメーターをつけるしかない」(つまり、トラフィック量で課金するしかない)と仰っていました。これが通信業者が主張している「ビジネスモデルへの制約」ということであって、ネットワーク中立性を主張する側から、この問題に対する的確な答えがないような気がしてます。

■ 私なりには…
勉強不足で具体的なことをは何も言えませんが、基本は通信業者間で適正な競争を起こすことが第一であって、ネットワーク中立性を「強制」するのは、その次の手なんだろうと思っています。

論点としては上記のような感じだと思ってるのですが、事実認識の違う記事があるので(通信業者は本当に財政的にやばいのか?とか)、そこらへんをちゃんと整理しないと、思考が進まなさそうなので今日はこの辺で。。


[参考情報]
「ネット中立性」関連法案、米上院委員会では賛否同数で否決(CNET)
「インフラただ乗り」で始まるインターネットの新たな議論
総務省:IP化の進展に対応した競争ルールの在り方に関する追加意見の公表(Googleなどの企業からの提言書があります)
インターネット中立性(池田信夫氏)
インターネットの自由と規制(池田信夫氏)

Net Neutrality: This is serious (Tim Barners-Leeが動画でネットワーク中立性を訴えています)
Network neutrality? Welcome to the stupid Internet
SAVE THE INTERNET.COM
Hardware firms oppose Net neutrality laws
ebayのネットワーク中立性への訴え
Googleのネットワーク中立性への訴え
posted by TAI at 23:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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